医療法人 光川会 福岡脳神経外科病院 FUKUOKA NEUROSURGICAL HOSPITAL

脳の病気

【脳卒中】脳動静脈奇形

脳動静脈奇形は一種の血管の奇形です。身体の血管は普通動脈から毛細血管となり、そこで酸素や栄養を組織に与え、変わりに不要な老廃物を血液に取り込んで静脈となり、心臓へ戻ります。脳動静脈奇形は動脈が異常な血管の塊を通って直接静脈と繋がっています。
 
どんな病気
脳動静脈奇形は普通無症状ですが、けいれんを起こして始めて分かる例があります。また脳動静脈奇形は破裂して出血することがあり、脳内出血やくも膜下出血の原因となります(通常は脳内出血)。脳動静脈奇形の出血は若い人に多く、20-40歳台で発症しますから、若い人の脳出血とくに皮質下出血・くも膜下出血は脳動静脈奇形破裂を疑います。出血の頻度は年間2-3%程度と考えられていますが、一度出血した脳動静脈奇形は1年以内に再出血する率が6%と高くなります。
 
どんな症状
何かのきっかけで発見
脳動静脈奇形は存在だけでは殆ど無症状ですから、何かのきっかけがないと分かりません。脳動静脈奇形と診断された例のうち脳出血が最も多く50-60%、けいれん発作が30-40%です。出血すると重篤な症状となります。

突然の頭痛・嘔吐があり、片麻痺などの局所脳症状が進んできます。出血した例の10%前後が死亡してしまいます。けいれんは手や足がピクピク震えるようになり、それが次第に広がって来るタイプが最も多いですが、突然倒れて身体が硬直したり、全身がガクガクする大発作の場合もあります。頻度は一定しません。年に2-3回の人が多いと思います。てんかん発作として治療されている人は必ず一度は脳の検査をする必要があります。

他に頭部の雑音を訴える人がいます。比較的大きな脳動静脈奇形や硬膜脳動静脈瘻といい脳を覆っている膜にできた硬膜脳動静脈瘻(頚動脈海綿静脈洞瘻も含む)で、心臓の拍動に一致したザッザッという音がします。硬膜脳動静脈瘻は以前は硬膜脳動静脈奇形と呼ばれていました。脳動静脈奇形は先天疾患で硬膜脳動静脈瘻は好転疾患ですので、区別する必要があります。
 
ガレン大静脈瘤
特殊な脳動静脈奇形としてガレン大静脈瘤があります。これは新生児や幼児に発症します。脳に大量の血流が必要なため心臓に負荷がかかり心不全が起こります。頭部の雑音や水頭症による頭囲拡大で診断されます。治療は難しいですが血管内手術で可能です。治療されないと2ヶ月以上生存することは難しい病気です。
 
どんな診断・検査
出血の場合はCTスキャンで分かりますが、脳動静脈奇形自体は造影剤を使った3D-CTAや脳血管造影の検査をしないと見えません(脳動静脈奇形が石灰化している場合は単純CTで診断がつく)。ですから出血の場合でもけんれんの場合でも必ず一度は3D-CTAやMRAを行います。

脳神経外科医などの専門家が診察していない場合、通常の脳出血やてんかんと診断され、脳動静脈奇形との診断がずっと遅れてしまうことがあります。MRAは造影剤を使わなくても脳動静脈奇形を診断することができます。脳動静脈奇形の存在は3D-CTAやMRAで分かりますが、血液がどの動脈から入ってどの静脈に出るのかが治療には重要で、これを知るために脳血管造影を行います。
 
どんな治療法
出血が大きい場合
出血した脳動静脈奇形は再出血する可能性がありますので、完全に脳動静脈奇形を摘出することが理想的な治療となります。出血した時、出血が大きければ開頭して血腫を取り除きます。その際血管造影で脳動静脈奇形があることが分かっていれば摘出しますが、大きなものや複雑なものは無理に取らずに落ち着いてから治療を行います。
 
けいれんで発症した場合
けいれんで発症した脳動静脈奇形も若い人では将来出血する確率がありますので、出血の予防の意味で開頭して全摘出することもあります。しかし脳動静脈奇形のうち5cm以上の大きなものや、血管構築が複雑なもの、脳の中で重要な機能を持っている場所にある脳動静脈奇形は直接手術ができません。
 
直接手術ができない場合
そのような場合にはガンマナイフやリニアック放射線外科といって放射線のビームを当てる器械を使って脳動静脈奇形を焼く放射線手術を行います。ガンマナイフ治療は3cm以下(確実なものは2.5cm以下)の大きさの脳動静脈奇形がよい適応です。脳動静脈奇形が閉塞するまでに1年から5年かかり、閉塞しないものも10-20%あります。完全に閉塞するまで出血する確率は減りません。
また完全に脳血管造影上脳動静脈奇形が閉塞しても再出血の症例の報告もあります。ガンマナイフ治療は大線量一回照射が原則ですが、大きな脳動静脈奇形に対しては分割照射をすることもあります。
 
血管内手術
また大きな動静脈奇形に対しては血管内手術といって血管造影と同じように股の動脈からカテーテルを入れ、これを脳動静脈奇形の流入動脈まで挿入し、プラチナでできた細いコイル(GDCコイル)や液体塞栓物質(Onyx)などを使って脳動静脈奇形を閉塞する塞栓術を行います。この方法は局所麻酔で行えますが通常全身麻酔で行います。股の動脈に針を刺すだけですから、患者さんにとっては負担が少ない方法ですが、完全に脳動静脈奇形を閉塞することは困難なため、2-3回塞栓術を行って、小さくしてから開頭手術やガンマナイフ治療に持って行く手段として行われています。
 
治療法の選択
脳動静脈奇形の手術や血管内手術は複雑で技術を要します。治療による合併症は頻度が低いですが、十分検討した上で最良の治療方針を決定します。多くの場合、血管内手術のあと開頭手術やガンマナイフ治療を行うというように段階的に治療します。年齢も考慮にいれ総合的に判断して最終的に治療しないという選択肢もありえます。

けいれんが症状である脳動静脈奇形は治療をしてもけいれんが完全になくなることはありません。抗けいれん剤は通常やめないで続けます。
 
アメリカの事例
2014年アメリカで未破裂脳動静脈奇形204人を対象に、保存と介入(外科的切除・血管内手術・放射線治療など)後の転帰を12年間比較検討しています。主要項目(死亡/後遺症)は最初の4年は保存群で低く、その後は同程度でした。副次評価項目(非致死的脳卒中など)は保存群で低い結果となっています。したがって、未破裂脳動静脈奇形は治療よりも保存的にみる傾向があります。


(文責:髙橋 伸明)
脳動静脈奇形は一種の血管の奇形です。身体の血管は普通動脈から毛細血管となり、そこで酸素や栄養を組織に与え、変わりに不要な老廃物を血液に取り込んで静脈となり、心臓へ戻ります。脳動静脈奇形は動脈が異常な血管の塊を通って直接静脈と繋がっています。
 
どんな病気
脳動静脈奇形は普通無症状ですが、けいれんを起こして始めて分かる例があります。また脳動静脈奇形は破裂して出血することがあり、脳内出血やくも膜下出血の原因となります(通常は脳内出血)。脳動静脈奇形の出血は若い人に多く、20-40歳台で発症しますから、若い人の脳出血とくに皮質下出血・くも膜下出血は脳動静脈奇形破裂を疑います。出血の頻度は年間2-3%程度と考えられていますが、一度出血した脳動静脈奇形は1年以内に再出血する率が6%と高くなります。
 
どんな症状
何かのきっかけで発見
脳動静脈奇形は存在だけでは殆ど無症状ですから、何かのきっかけがないと分かりません。脳動静脈奇形と診断された例のうち脳出血が最も多く50-60%、けいれん発作が30-40%です。出血すると重篤な症状となります。

突然の頭痛・嘔吐があり、片麻痺などの局所脳症状が進んできます。出血した例の10%前後が死亡してしまいます。けいれんは手や足がピクピク震えるようになり、それが次第に広がって来るタイプが最も多いですが、突然倒れて身体が硬直したり、全身がガクガクする大発作の場合もあります。頻度は一定しません。年に2-3回の人が多いと思います。てんかん発作として治療されている人は必ず一度は脳の検査をする必要があります。

他に頭部の雑音を訴える人がいます。比較的大きな脳動静脈奇形や硬膜脳動静脈瘻といい脳を覆っている膜にできた硬膜脳動静脈瘻(頚動脈海綿静脈洞瘻も含む)で、心臓の拍動に一致したザッザッという音がします。硬膜脳動静脈瘻は以前は硬膜脳動静脈奇形と呼ばれていました。脳動静脈奇形は先天疾患で硬膜脳動静脈瘻は好転疾患ですので、区別する必要があります。
 
ガレン大静脈瘤
特殊な脳動静脈奇形としてガレン大静脈瘤があります。これは新生児や幼児に発症します。脳に大量の血流が必要なため心臓に負荷がかかり心不全が起こります。頭部の雑音や水頭症による頭囲拡大で診断されます。治療は難しいですが血管内手術で可能です。治療されないと2ヶ月以上生存することは難しい病気です。
 
どんな診断・検査
出血の場合はCTスキャンで分かりますが、脳動静脈奇形自体は造影剤を使った3D-CTAや脳血管造影の検査をしないと見えません(脳動静脈奇形が石灰化している場合は単純CTで診断がつく)。ですから出血の場合でもけんれんの場合でも必ず一度は3D-CTAやMRAを行います。

脳神経外科医などの専門家が診察していない場合、通常の脳出血やてんかんと診断され、脳動静脈奇形との診断がずっと遅れてしまうことがあります。MRAは造影剤を使わなくても脳動静脈奇形を診断することができます。脳動静脈奇形の存在は3D-CTAやMRAで分かりますが、血液がどの動脈から入ってどの静脈に出るのかが治療には重要で、これを知るために脳血管造影を行います。
 
どんな治療法
出血が大きい場合
出血した脳動静脈奇形は再出血する可能性がありますので、完全に脳動静脈奇形を摘出することが理想的な治療となります。出血した時、出血が大きければ開頭して血腫を取り除きます。その際血管造影で脳動静脈奇形があることが分かっていれば摘出しますが、大きなものや複雑なものは無理に取らずに落ち着いてから治療を行います。
 
けいれんで発症した場合
けいれんで発症した脳動静脈奇形も若い人では将来出血する確率がありますので、出血の予防の意味で開頭して全摘出することもあります。しかし脳動静脈奇形のうち5cm以上の大きなものや、血管構築が複雑なもの、脳の中で重要な機能を持っている場所にある脳動静脈奇形は直接手術ができません。
 
直接手術ができない場合
そのような場合にはガンマナイフやリニアック放射線外科といって放射線のビームを当てる器械を使って脳動静脈奇形を焼く放射線手術を行います。ガンマナイフ治療は3cm以下(確実なものは2.5cm以下)の大きさの脳動静脈奇形がよい適応です。脳動静脈奇形が閉塞するまでに1年から5年かかり、閉塞しないものも10-20%あります。完全に閉塞するまで出血する確率は減りません。
また完全に脳血管造影上脳動静脈奇形が閉塞しても再出血の症例の報告もあります。ガンマナイフ治療は大線量一回照射が原則ですが、大きな脳動静脈奇形に対しては分割照射をすることもあります。
 
血管内手術
また大きな動静脈奇形に対しては血管内手術といって血管造影と同じように股の動脈からカテーテルを入れ、これを脳動静脈奇形の流入動脈まで挿入し、プラチナでできた細いコイル(GDCコイル)や液体塞栓物質(Onyx)などを使って脳動静脈奇形を閉塞する塞栓術を行います。この方法は局所麻酔で行えますが通常全身麻酔で行います。股の動脈に針を刺すだけですから、患者さんにとっては負担が少ない方法ですが、完全に脳動静脈奇形を閉塞することは困難なため、2-3回塞栓術を行って、小さくしてから開頭手術やガンマナイフ治療に持って行く手段として行われています。
 
治療法の選択
脳動静脈奇形の手術や血管内手術は複雑で技術を要します。治療による合併症は頻度が低いですが、十分検討した上で最良の治療方針を決定します。多くの場合、血管内手術のあと開頭手術やガンマナイフ治療を行うというように段階的に治療します。年齢も考慮にいれ総合的に判断して最終的に治療しないという選択肢もありえます。

けいれんが症状である脳動静脈奇形は治療をしてもけいれんが完全になくなることはありません。抗けいれん剤は通常やめないで続けます。
 
アメリカの事例
2014年アメリカで未破裂脳動静脈奇形204人を対象に、保存と介入(外科的切除・血管内手術・放射線治療など)後の転帰を12年間比較検討しています。主要項目(死亡/後遺症)は最初の4年は保存群で低く、その後は同程度でした。副次評価項目(非致死的脳卒中など)は保存群で低い結果となっています。したがって、未破裂脳動静脈奇形は治療よりも保存的にみる傾向があります。


(文責:髙橋 伸明)
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