医療法人 光川会 福岡脳神経外科病院 FUKUOKA NEUROSURGICAL HOSPITAL

脳の病気

【その他の疾患】パーキンソン病

パーキンソン病は中脳の黒質の変性によって起こる病気です。黒質と線条体の連絡に使われるドパミン量が不足することによって錐体外路症状を出す病気です。中高年以降に発症し、徐々に症状が進行していく疾患です。パーキンソン病患者は1000人に1人と比較的効率に発症します。

1917年、英国のジェームス・パーキンソンによって初めて報告されましたが、長い間評価されませんでした。1888年仏国のマルタン・シャルコーにより再評価され、パーキンソン病と呼ばれるようになりました。


 
どんな病気
①安静時振戦:
指に見られることが多く、上肢全体・下腿・顎に見られることもあります。左右差が有り、精神的な緊張で振戦が増強する事があります。動作で減弱します。振戦はあたかも丸薬を丸めるような動きをします。2012年のロンドンオリンピック開会式の聖火の点火台でのモハメド・アリの姿をご記憶の方も多いと思います。(慢性外傷性脳症によるパーキンソン症候群との説もあります)
 
②筋強剛(筋固縮):
身体の動きが硬くなり、患者の上肢などを他動的に動かすと、あたかも歯車の様な抵抗を感じます。仮面用様貌と言って表情がなくなるのは顔面筋の強剛によるものともいわれています。
 
③無動・寡動:
仮面様顔貌・低く単調な話し声・動作の緩慢が特徴です。
 
④姿勢反射障害・歩行障害:
姿勢は前かがみになり(極度の前屈み:camptocormia、首下がり:antecollis)、手の振りがなくなり、歩幅が狭く、小刻み歩行になります。第一歩がなかなか出ません(すくみ足)。また、歩き出すと止まれなく突進します。従って、いつまで待っても横断歩道が渡れない方がいます。

最近では非運動症状(嗅覚低下、便秘、睡眠障害、(RBD:REM睡眠期行動障害、むずむず脚症候群)なども初期パーキンソン病の主要症候と考えられています。
 
ヤールの重症度分類(Neurology:1967年)
ステージ1. 症状は一側性で通常は機能的障害がないかあっても経鼻
ステージ2. 両側性の障害はあるが、姿勢保持の障害はない
ステージ3. 姿勢保持障害が見られる。活動はある程度制限されるが、職種によっては仕事が可能である。機能的障害は軽ないし中等度だが、日常生活に介助不要
ステージ4. 重篤な機能障害を呈し、自力のみによる生活は困難となるが、歩行は介助なしにどうにか可能
ステージ5. 立つことも不可能で、介助なしではベッドまたは車椅子生活
 
生活機能障害(厚生省、異常運動疾患調査研究班:1978年)
Ⅰ度:日常生活・通院にほとんど介助を要しない
Ⅱ度:日常生活・通院に部分解除を要する
Ⅲ度:日常生活に全面的介助を要し、独力では歩行・起立不能

厚生労働省の“特定疾患対策の治療対象疾患”として認定されるのは、ヤールの重症度ステージ3以上・生活機能障害度のⅡまたはⅢ度です。
 
どんな診断・検査
脳内(黒質)のドパミン神経細胞の減少はMRIでは診断できません。したがって、MRIでは基本的には異常を認めず、他疾患との鑑別目的で検査します。最近、3テスラMRIでNRCと言う撮像法で黒質神経メラニンを半定量化する方法が考案されています。

補助検査としては、MIBG心筋シンチで心臓の交感神経の働きをみたり、DATスキャンでドーパミントランスポーターの減少も確認することでより正確な鑑別診断が行えるようになってきています。
症状とレボドパ投与で症状が改善すれば、パーキンソン病と診断できます。
 
パーキンソン症候群について
本症以外の変性疾患(多系統萎縮症・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核症候群)などでパーキンソン様症状を認めるものをパーキンソン症候群と呼びます。また、脳血管障害性・頭部外傷後・脳炎後・薬剤性・中毒性・感染性のパーキンソン症状も鑑別に上がります。
 
薬剤性パーキンソン症状について
薬剤性パーキンソン症状をよく見ますので、ここに触れたいと思います。抗精神薬(ブチロフェノン:セレネース等、ベンズアミド:スルピリド:ドグマチール等)、自律神経薬(副交感神経刺激薬:ウブレチド・ワゴスチグミン・メトクロプラミド:プリンペラン)等が挙げられます。
 
どんな治療
レボドパ:ドパミンの前駆物質(メネシット・マドパ・イーシードパール・ネオドパストン等)、副作用でジスキネジア・日内変動・・ウェアリングオフ嘔気があります。
 
ドパミン受容体作動薬:
麦角系(カバサール・ペルマックス・パーロデル)、非麦角系(ビシフロール・レキップ・貼り薬のニュープロパッチ)、麦角系には重篤な副作用(心臓弁膜症・間質性肺炎)があり、あまり使われなくなりました。非麦角系の副作用では突発的睡眠やドパミン調節異常症候群(反復常同行動、衝動制御障害)などが現れることがあります。急に内服を中止すると悪性症候群などの重篤な副作用を引き起こすこともあり主治医の指導に従った内服が肝要です。
 
その他の治療薬
他にも抗コリン薬、ゾニサミド、モノアミン酸化酵素B阻害剤、COMT阻害薬、、アデノシンA2A受容体拮抗薬、アポモルヒネ塩酸塩注射薬などの新規治療薬があります。それぞれ効果・副作用を考えながら使うことが大切です。
 
胃瘻からの持続投与剤:
レボドパ/カルビドパ配合経腸用液も最近発売されました(ジスキネジア・・ウェアリングオフを減少)。
 
外科治療:
視床下核・視床腹外側核・視床腹中間核・淡蒼球内節などの定位的凝固破壊術、視床下核に対しては脳深部刺激療法があります。
 
放射線治療(ガンマナイフ治療):
定位的凝固破壊術ですが、まだ保険適応はありません。1968年、カロリンスカ大学(スフェーデン)のレクセル教授がパーキンソン病に対して、初めて行った治療です。
 
iPS細胞:
山中伸弥教授で有名になったiPS細胞を使っての再生医療が京都大学高橋淳教授の下で計画中です。

50年くらい前は発症したら6年くらいで寝たきりになり肺炎で命を落とすこともあった難病ですが、現在では上記のような色々な治療法があり、平均寿命を全うする方が増えています。パーキンソン病と診断されても悲観的にならず前向きに治療に取り組んで下さい。
 
(文責:髙橋 伸明)
パーキンソン病は中脳の黒質の変性によって起こる病気です。黒質と線条体の連絡に使われるドパミン量が不足することによって錐体外路症状を出す病気です。中高年以降に発症し、徐々に症状が進行していく疾患です。パーキンソン病患者は1000人に1人と比較的効率に発症します。

1917年、英国のジェームス・パーキンソンによって初めて報告されましたが、長い間評価されませんでした。1888年仏国のマルタン・シャルコーにより再評価され、パーキンソン病と呼ばれるようになりました。


 
どんな病気
①安静時振戦:
指に見られることが多く、上肢全体・下腿・顎に見られることもあります。左右差が有り、精神的な緊張で振戦が増強する事があります。動作で減弱します。振戦はあたかも丸薬を丸めるような動きをします。2012年のロンドンオリンピック開会式の聖火の点火台でのモハメド・アリの姿をご記憶の方も多いと思います。(慢性外傷性脳症によるパーキンソン症候群との説もあります)
 
②筋強剛(筋固縮):
身体の動きが硬くなり、患者の上肢などを他動的に動かすと、あたかも歯車の様な抵抗を感じます。仮面用様貌と言って表情がなくなるのは顔面筋の強剛によるものともいわれています。
 
③無動・寡動:
仮面様顔貌・低く単調な話し声・動作の緩慢が特徴です。
 
④姿勢反射障害・歩行障害:
姿勢は前かがみになり(極度の前屈み:camptocormia、首下がり:antecollis)、手の振りがなくなり、歩幅が狭く、小刻み歩行になります。第一歩がなかなか出ません(すくみ足)。また、歩き出すと止まれなく突進します。従って、いつまで待っても横断歩道が渡れない方がいます。

最近では非運動症状(嗅覚低下、便秘、睡眠障害、(RBD:REM睡眠期行動障害、むずむず脚症候群)なども初期パーキンソン病の主要症候と考えられています。
 
ヤールの重症度分類(Neurology:1967年)
ステージ1. 症状は一側性で通常は機能的障害がないかあっても経鼻
ステージ2. 両側性の障害はあるが、姿勢保持の障害はない
ステージ3. 姿勢保持障害が見られる。活動はある程度制限されるが、職種によっては仕事が可能である。機能的障害は軽ないし中等度だが、日常生活に介助不要
ステージ4. 重篤な機能障害を呈し、自力のみによる生活は困難となるが、歩行は介助なしにどうにか可能
ステージ5. 立つことも不可能で、介助なしではベッドまたは車椅子生活
 
生活機能障害(厚生省、異常運動疾患調査研究班:1978年)
Ⅰ度:日常生活・通院にほとんど介助を要しない
Ⅱ度:日常生活・通院に部分解除を要する
Ⅲ度:日常生活に全面的介助を要し、独力では歩行・起立不能

厚生労働省の“特定疾患対策の治療対象疾患”として認定されるのは、ヤールの重症度ステージ3以上・生活機能障害度のⅡまたはⅢ度です。
 
どんな診断・検査
脳内(黒質)のドパミン神経細胞の減少はMRIでは診断できません。したがって、MRIでは基本的には異常を認めず、他疾患との鑑別目的で検査します。最近、3テスラMRIでNRCと言う撮像法で黒質神経メラニンを半定量化する方法が考案されています。

補助検査としては、MIBG心筋シンチで心臓の交感神経の働きをみたり、DATスキャンでドーパミントランスポーターの減少も確認することでより正確な鑑別診断が行えるようになってきています。
症状とレボドパ投与で症状が改善すれば、パーキンソン病と診断できます。
 
パーキンソン症候群について
本症以外の変性疾患(多系統萎縮症・進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核症候群)などでパーキンソン様症状を認めるものをパーキンソン症候群と呼びます。また、脳血管障害性・頭部外傷後・脳炎後・薬剤性・中毒性・感染性のパーキンソン症状も鑑別に上がります。
 
薬剤性パーキンソン症状について
薬剤性パーキンソン症状をよく見ますので、ここに触れたいと思います。抗精神薬(ブチロフェノン:セレネース等、ベンズアミド:スルピリド:ドグマチール等)、自律神経薬(副交感神経刺激薬:ウブレチド・ワゴスチグミン・メトクロプラミド:プリンペラン)等が挙げられます。
 
どんな治療
レボドパ:ドパミンの前駆物質(メネシット・マドパ・イーシードパール・ネオドパストン等)、副作用でジスキネジア・日内変動・・ウェアリングオフ嘔気があります。
 
ドパミン受容体作動薬:
麦角系(カバサール・ペルマックス・パーロデル)、非麦角系(ビシフロール・レキップ・貼り薬のニュープロパッチ)、麦角系には重篤な副作用(心臓弁膜症・間質性肺炎)があり、あまり使われなくなりました。非麦角系の副作用では突発的睡眠やドパミン調節異常症候群(反復常同行動、衝動制御障害)などが現れることがあります。急に内服を中止すると悪性症候群などの重篤な副作用を引き起こすこともあり主治医の指導に従った内服が肝要です。
 
その他の治療薬
他にも抗コリン薬、ゾニサミド、モノアミン酸化酵素B阻害剤、COMT阻害薬、、アデノシンA2A受容体拮抗薬、アポモルヒネ塩酸塩注射薬などの新規治療薬があります。それぞれ効果・副作用を考えながら使うことが大切です。
 
胃瘻からの持続投与剤:
レボドパ/カルビドパ配合経腸用液も最近発売されました(ジスキネジア・・ウェアリングオフを減少)。
 
外科治療:
視床下核・視床腹外側核・視床腹中間核・淡蒼球内節などの定位的凝固破壊術、視床下核に対しては脳深部刺激療法があります。
 
放射線治療(ガンマナイフ治療):
定位的凝固破壊術ですが、まだ保険適応はありません。1968年、カロリンスカ大学(スフェーデン)のレクセル教授がパーキンソン病に対して、初めて行った治療です。
 
iPS細胞:
山中伸弥教授で有名になったiPS細胞を使っての再生医療が京都大学高橋淳教授の下で計画中です。

50年くらい前は発症したら6年くらいで寝たきりになり肺炎で命を落とすこともあった難病ですが、現在では上記のような色々な治療法があり、平均寿命を全うする方が増えています。パーキンソン病と診断されても悲観的にならず前向きに治療に取り組んで下さい。
 
(文責:髙橋 伸明)
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(受付8:30~12:00)
日祝・年末年始除く

診療科目
脳神経外科、脳卒中内科、神経内科、
(急性期)リハビリテーション科
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