医療法人 光川会 福岡脳神経外科病院 FUKUOKA NEUROSURGICAL HOSPITAL

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脳の病気

【脳卒中】くも膜下出血

皆さんはくも膜下出血という病気を聞いたことがあると思います。新聞の死亡欄でもよく見かけますし、ご家族や友人や芸能人でくも膜下出血になって、亡くなったり寝たきりになった方もいらっしゃると思います。このことからも分かるようにくも膜下出血は重篤な病気です。
 
どんな病気
発症するとおよそ3分の1の方が死亡し、3分の1の方が障害を残しますが、残り3分の1の方は元気に社会復帰することができます。このくも膜下出血は中年以上の人では脳の動脈にできた脳動脈瘤、若い人では生まれつき持っている脳動静脈奇形というものが破裂し、くも膜下腔に出血して起こるものです(脳動静脈奇形の破裂は主として脳内出血となります)。
 
「くも膜」と「脳表」の間に出血
脳は3層の髄膜で囲まれていて、その中間の膜がくも膜です。脳動脈瘤は脳とくも膜の間にありますから、脳動脈瘤が破裂すると血液がくも膜と脳表の間に凄い勢いで広がります。このようにくも膜の下に出血が起こるのでくも膜下出血といいます。

出血は血圧と同じ圧で起こりますから、頭蓋内圧が血圧と同じになった時点で出血は止まります。これが一瞬の間に起こり、それに絶えられないと呼吸が停止してしまい、突然死となります。
また脳は通常髄液という透明な液の中に浮いていますから、血液にさらされると色々なことが起こってきます。ですからくも膜下出血が幸いに軽症であっても、起こってから2週間は目がはなせません。
 
なぜ突然起こるか
脳動脈瘤はよほど大きくなって周囲の組織を圧迫しない限り、何の症状もありません。ですから元気な人でも突然脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血となる可能性があるわけです。くも膜下出血は脳卒中の一種です。脳卒中全体の死亡率は年々減少してきましたが、くも膜下出血の発症数や死亡数は殆ど変化がありません。年間2万人程度の人が発症します。
 
どんな症状
突然の頭痛
くも膜下出血は突然の頭痛で発症します。この頭痛は今まで経験した中で一番痛いものです。後頭部をハンマーで殴られたような痛みと表現する人もいます。重症の場合は大声で叫び、倒れてそのまま呼吸が止まってしまう場合があります。こういった重症例は15%ぐらいと考えられます。この場合、すぐにマウスツーマウスで人口呼吸をすれば意識が戻ってくる可能性がありますが、実行された例はほとんどありません。中等症の場合は一瞬意識がなくなっても戻ってきます。
脳内出血と違い片麻痺等の脳局所症状が起こることは少なく、頭痛と嘔吐、意識障害が主な症状です。軽症では頭痛が続き何となくおかしいという症状で、歩いて外来に来られる場合もあります。
 
どんな人が、いつ起こることが多いか
くも膜下出血の危険因子は喫煙、高血圧などがですが、高血圧の人に起こるとは限りません。起こる時は睡眠中が10%、通常の状態が35%、排便や性交、重労働などの緊張や努力時が40%程度で、やはり力んだときに多いといえます。くも膜下出血は全身にも影響を及ぼし、不整脈や眼の中の出血を起こします。
 
軽症でも油断できない
くも膜下出血は軽症であっても、また病院に入院できても安心はできません。くも膜下出血を起こした人の20%程度が再破裂します。これは最初の6時間で最も多くその後徐々に破裂率は下がってきます。しかし再破裂はくも膜下出血の死因の大きな原因です。ですから入院して検査をして手術を待っている間にも再破裂する可能性があるわけです。
更に手術後も安心はできません。くも膜下出血は脳表に広がります。今迄きれいな髄液の中に浮いていた脳が急に血液にさらされますので、脳や脳血管が様々な反応を起こします。そのうち重大な症状を起こすものが脳血管れん縮といって脳の太い血管がギュッと縮んでしまうものです。脳血管が縮むとその先へ血液が行かなくなりますから、脳梗塞を起こして片麻痺や失語がでます。これは発症から1週間前後で起こります。
また髄液の流れが停滞して水頭症を起こすこともあります。
 
影響の度合い
発症から安心できる状態になるには最低2週間かかりますから軽症でも1-2ヶ月の入院となります。一番影響を及ぼすのは最初の脳障害の程度です。くも膜下出血以外にも脳内出血を合併することもあり、その場合には片麻痺などの症状が残ります。
また最初の出血で意識障害が強い場合は死亡や遷延性意識障害となる例が多くなります。
重症例も多いですが、3分の1の例で元気に社会復帰できます。
 
どんな診断・検査
突然起こった強い頭痛の場合はくも膜下出血の可能性も考えて病院へ行って下さい。患者さんの話を聞くと頭痛が起こった瞬間を秒単位ではっきり言うことができます。後頭部から頭頂部に向かって燃えるように熱くなったという人もいます。「段々痛くなってきた」とか「気が付いたら痛かった」といった場合は殆ど違う種類の頭痛です。またこの頭痛は数日続き、いつもの頭痛と様子が違います。
 
診断方法
殆どの例は出血当日に病院にきます。その場合はCTスキャンを行えば診断は容易です。しかし、軽症の場合や発症して数日経った場合はCTで分からないこともあります。その場合はベッドに寝て頸が固くなっているかどうかを調べます。これがあるとかなり疑わしくなります。症状からどうしてもくも膜下出血が否定できない時は腰椎穿刺といって背中から針を刺して髄液を採取します。この髄液に血液が混ざっていればくも膜下出血です。
 
最近の検査方法
くも膜下出血と診断した場合、以前は脳血管造影を行いました。股の動脈から針を刺して脳の血管にカテーテルを入れて造影します。この検査で破裂した脳動脈瘤を確認します。
最近では3D-CTAといって、末梢の静脈から造影剤を注入しCTで脳血管を立体的に描出します。MRIはくも膜下出血の急性期にはあまり有用ではありませんが、MRAといってカテーテルや造影剤を入れなくても脳血管を写しだす方法があり、これでも脳動脈瘤の診断ができます。
 
どんな治療法
「ネッククリッピング」
くも膜下出血の治療の第一目的は再破裂の防止です。そのためにネッククリッピングという手術を行います。全身麻酔下で頭蓋を開け、脳動脈瘤を直接出して本管の動脈から動脈瘤が出ている場所(ネック)を金属製のクリップで挟んで、動脈瘤に血液が行かなくなるようにします。この手術は発症から72時間以内に行うのが原則です。軽症の場合はその限りではありません。
 
患者さんに負担の少ない「血管内手術(コイル塞栓術)」
最近ではネッククリッピングの代わりに血管内手術という方法もよく行われるようになってきました。これは血管造影と同じように股の動脈からカテーテルを入れ、これを脳動脈瘤の中まで持っていってプラチナでできた細いコイル(GDCコイル)を脳動脈瘤の中に巻いていって脳動脈瘤の中をコイルでパックする方法です。コイル塞栓術ともいいます。この方法は局所麻酔下でも行えますが全身麻酔下のほうが好ましいです。股の動脈に針を刺すだけですから、ネッククリッピングよりも患者さんにとっては負担が少ない方法です。
コイル塞栓術は直接手術が難しい場所の脳動脈瘤や重症者・高齢者の場合に多くおこなわれます。最重症例では症状が改善すれば手術を行いますが、そうでなければ保存的治療を行います。

水頭症に対する処置をして待機することもあります。待機している間に症状が改善する場合は早ければ72時間以内、それ以降に改善が見られた場合は2週間待機してから手術を行います。血管内手術の時期に関してはその限りではありません。
 
生存率と日常生活自立率
2014年アメリカで破裂脳動脈瘤の長期生存者の追跡試験を行いました。破裂脳動脈瘤に対する血管内コイル塞栓術と開頭クリッピング術の比較試験(ISAT試験)の18年間を追跡した結果、対象者1644人の10年時生存率・日常生活自立率はコイル群がクリッピング群より勝っていました。
 
手術後の治療
くも膜下出血は手術で再破裂を予防すれば治るものではありません。1週間前後で起こる脳血管れん縮や水頭症・全身合併症の治療が必要です。脳血管れん縮は予防が大切で、塩酸ファスジル(エリル)、オザグレルナトリウム(カタクロット、キサンボン)、カルシウム拮抗薬などを使用し予防します。

症状がでる脳血管れん縮は10年前と比べて非常に減っていますが、時々起こります。症状が出た場合は脳梗塞になって症状が残ることがないように血管を広げたり、脳血流をよくする治療を行います。

水頭症は急性期のものと慢性期のものがあります。
慢性期のものは頭蓋内圧亢進症状で起こるものではなく、認知症・尿失禁・歩行障害などの症状があります。この場合はシャント手術といって髄液を脳の外(腹腔)へ流す手術を行います(脳室・腹腔短絡術)。くも膜下出血後安定してきてもなんとなくボーッとしておかしいといった症状が改善されます。
 
どんな予防法
破裂の前触れ
脳動脈瘤は破裂する前に分かることもあります。
動眼神経麻痺といって、片方の瞼が開かなくなり、両眼で物を見るとダブって見える(複視)様になることがあります。これは内頚動脈後交通動脈分岐部瘤という動脈瘤が大きくなり動眼神経を圧迫した時に起こります。破裂の前触れと考えられ、入院して手術を行います。また動脈瘤が視神経を圧迫すると視野が欠けたり、視力が落ちたりすることもあります。
 
判断が難しい「警告頭痛」
またくも膜下出血の頭痛より少し軽い頭痛があって見過ごしていると、そのあとにくも膜下出血を起こす例があります。これは少量のくも膜下出血が起こったものと考えられ、警告頭痛ともいわれますが、この時点で入院して治療ができている例はあまりありません。どちらにしろ殆どの例はくも膜下出血で発症し、病院に搬送されます。
 
見つかることが多くなってきた「未破裂脳動脈瘤」
最近ではMRAが簡単にできるようになり、他の病気でMRIを撮ったり、脳ドックで検査をした場合に破裂していない未破裂脳動脈瘤が見つかることが多くなってきました。脳ドックの調査などをまとめてみると未破裂脳動脈瘤は40歳以上の中高年の5%以上の人が持っていると考えられます。70歳以上では10%を超えるというデータもあります。また家族の2親等以内にくも膜下出血の人がいた場合は10%以上の保有率になり、家族で同じ病気になる確率が高いといえます。未破裂脳動脈瘤の破裂率については今迄色々な報告がありますが、年間0.05%から2%と報告されており、未だはっきりしたことがいえません。しかし100人に1人前後が一年間の間に破裂すると考えていいと思います。

最近では未破裂脳動脈瘤が見つかった場合に5mm以上、70歳以下であれば破裂する前にネッククリッピングやコイル塞栓術を行って破裂を予防する手術が行われています。しかしこの治療法にもリスクが伴います。
これについては未破裂脳動脈瘤の項に詳しく書きましたので、それを読んで下さい。御自分の家族がくも膜下出血を起こした場合、心配であればMRAの検査を受けてみるのもいいかもしれません。
 
(文責:髙橋 伸明)
皆さんはくも膜下出血という病気を聞いたことがあると思います。新聞の死亡欄でもよく見かけますし、ご家族や友人や芸能人でくも膜下出血になって、亡くなったり寝たきりになった方もいらっしゃると思います。このことからも分かるようにくも膜下出血は重篤な病気です。
 
どんな病気
発症するとおよそ3分の1の方が死亡し、3分の1の方が障害を残しますが、残り3分の1の方は元気に社会復帰することができます。このくも膜下出血は中年以上の人では脳の動脈にできた脳動脈瘤、若い人では生まれつき持っている脳動静脈奇形というものが破裂し、くも膜下腔に出血して起こるものです(脳動静脈奇形の破裂は主として脳内出血となります)。
 
「くも膜」と「脳表」の間に出血
脳は3層の髄膜で囲まれていて、その中間の膜がくも膜です。脳動脈瘤は脳とくも膜の間にありますから、脳動脈瘤が破裂すると血液がくも膜と脳表の間に凄い勢いで広がります。このようにくも膜の下に出血が起こるのでくも膜下出血といいます。

出血は血圧と同じ圧で起こりますから、頭蓋内圧が血圧と同じになった時点で出血は止まります。これが一瞬の間に起こり、それに絶えられないと呼吸が停止してしまい、突然死となります。
また脳は通常髄液という透明な液の中に浮いていますから、血液にさらされると色々なことが起こってきます。ですからくも膜下出血が幸いに軽症であっても、起こってから2週間は目がはなせません。
 
なぜ突然起こるか
脳動脈瘤はよほど大きくなって周囲の組織を圧迫しない限り、何の症状もありません。ですから元気な人でも突然脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血となる可能性があるわけです。くも膜下出血は脳卒中の一種です。脳卒中全体の死亡率は年々減少してきましたが、くも膜下出血の発症数や死亡数は殆ど変化がありません。年間2万人程度の人が発症します。
 
どんな症状
突然の頭痛
くも膜下出血は突然の頭痛で発症します。この頭痛は今まで経験した中で一番痛いものです。後頭部をハンマーで殴られたような痛みと表現する人もいます。重症の場合は大声で叫び、倒れてそのまま呼吸が止まってしまう場合があります。こういった重症例は15%ぐらいと考えられます。この場合、すぐにマウスツーマウスで人口呼吸をすれば意識が戻ってくる可能性がありますが、実行された例はほとんどありません。中等症の場合は一瞬意識がなくなっても戻ってきます。
脳内出血と違い片麻痺等の脳局所症状が起こることは少なく、頭痛と嘔吐、意識障害が主な症状です。軽症では頭痛が続き何となくおかしいという症状で、歩いて外来に来られる場合もあります。
 
どんな人が、いつ起こることが多いか
くも膜下出血の危険因子は喫煙、高血圧などがですが、高血圧の人に起こるとは限りません。起こる時は睡眠中が10%、通常の状態が35%、排便や性交、重労働などの緊張や努力時が40%程度で、やはり力んだときに多いといえます。くも膜下出血は全身にも影響を及ぼし、不整脈や眼の中の出血を起こします。
 
軽症でも油断できない
くも膜下出血は軽症であっても、また病院に入院できても安心はできません。くも膜下出血を起こした人の20%程度が再破裂します。これは最初の6時間で最も多くその後徐々に破裂率は下がってきます。しかし再破裂はくも膜下出血の死因の大きな原因です。ですから入院して検査をして手術を待っている間にも再破裂する可能性があるわけです。
更に手術後も安心はできません。くも膜下出血は脳表に広がります。今迄きれいな髄液の中に浮いていた脳が急に血液にさらされますので、脳や脳血管が様々な反応を起こします。そのうち重大な症状を起こすものが脳血管れん縮といって脳の太い血管がギュッと縮んでしまうものです。脳血管が縮むとその先へ血液が行かなくなりますから、脳梗塞を起こして片麻痺や失語がでます。これは発症から1週間前後で起こります。
また髄液の流れが停滞して水頭症を起こすこともあります。
 
影響の度合い
発症から安心できる状態になるには最低2週間かかりますから軽症でも1-2ヶ月の入院となります。一番影響を及ぼすのは最初の脳障害の程度です。くも膜下出血以外にも脳内出血を合併することもあり、その場合には片麻痺などの症状が残ります。
また最初の出血で意識障害が強い場合は死亡や遷延性意識障害となる例が多くなります。
重症例も多いですが、3分の1の例で元気に社会復帰できます。
 
どんな診断・検査
突然起こった強い頭痛の場合はくも膜下出血の可能性も考えて病院へ行って下さい。患者さんの話を聞くと頭痛が起こった瞬間を秒単位ではっきり言うことができます。後頭部から頭頂部に向かって燃えるように熱くなったという人もいます。「段々痛くなってきた」とか「気が付いたら痛かった」といった場合は殆ど違う種類の頭痛です。またこの頭痛は数日続き、いつもの頭痛と様子が違います。
 
診断方法
殆どの例は出血当日に病院にきます。その場合はCTスキャンを行えば診断は容易です。しかし、軽症の場合や発症して数日経った場合はCTで分からないこともあります。その場合はベッドに寝て頸が固くなっているかどうかを調べます。これがあるとかなり疑わしくなります。症状からどうしてもくも膜下出血が否定できない時は腰椎穿刺といって背中から針を刺して髄液を採取します。この髄液に血液が混ざっていればくも膜下出血です。
 
最近の検査方法
くも膜下出血と診断した場合、以前は脳血管造影を行いました。股の動脈から針を刺して脳の血管にカテーテルを入れて造影します。この検査で破裂した脳動脈瘤を確認します。
最近では3D-CTAといって、末梢の静脈から造影剤を注入しCTで脳血管を立体的に描出します。MRIはくも膜下出血の急性期にはあまり有用ではありませんが、MRAといってカテーテルや造影剤を入れなくても脳血管を写しだす方法があり、これでも脳動脈瘤の診断ができます。
 
どんな治療法
「ネッククリッピング」
くも膜下出血の治療の第一目的は再破裂の防止です。そのためにネッククリッピングという手術を行います。全身麻酔下で頭蓋を開け、脳動脈瘤を直接出して本管の動脈から動脈瘤が出ている場所(ネック)を金属製のクリップで挟んで、動脈瘤に血液が行かなくなるようにします。この手術は発症から72時間以内に行うのが原則です。軽症の場合はその限りではありません。
 
患者さんに負担の少ない「血管内手術(コイル塞栓術)」
最近ではネッククリッピングの代わりに血管内手術という方法もよく行われるようになってきました。これは血管造影と同じように股の動脈からカテーテルを入れ、これを脳動脈瘤の中まで持っていってプラチナでできた細いコイル(GDCコイル)を脳動脈瘤の中に巻いていって脳動脈瘤の中をコイルでパックする方法です。コイル塞栓術ともいいます。この方法は局所麻酔下でも行えますが全身麻酔下のほうが好ましいです。股の動脈に針を刺すだけですから、ネッククリッピングよりも患者さんにとっては負担が少ない方法です。
コイル塞栓術は直接手術が難しい場所の脳動脈瘤や重症者・高齢者の場合に多くおこなわれます。最重症例では症状が改善すれば手術を行いますが、そうでなければ保存的治療を行います。

水頭症に対する処置をして待機することもあります。待機している間に症状が改善する場合は早ければ72時間以内、それ以降に改善が見られた場合は2週間待機してから手術を行います。血管内手術の時期に関してはその限りではありません。
 
生存率と日常生活自立率
2014年アメリカで破裂脳動脈瘤の長期生存者の追跡試験を行いました。破裂脳動脈瘤に対する血管内コイル塞栓術と開頭クリッピング術の比較試験(ISAT試験)の18年間を追跡した結果、対象者1644人の10年時生存率・日常生活自立率はコイル群がクリッピング群より勝っていました。
 
手術後の治療
くも膜下出血は手術で再破裂を予防すれば治るものではありません。1週間前後で起こる脳血管れん縮や水頭症・全身合併症の治療が必要です。脳血管れん縮は予防が大切で、塩酸ファスジル(エリル)、オザグレルナトリウム(カタクロット、キサンボン)、カルシウム拮抗薬などを使用し予防します。

症状がでる脳血管れん縮は10年前と比べて非常に減っていますが、時々起こります。症状が出た場合は脳梗塞になって症状が残ることがないように血管を広げたり、脳血流をよくする治療を行います。

水頭症は急性期のものと慢性期のものがあります。
慢性期のものは頭蓋内圧亢進症状で起こるものではなく、認知症・尿失禁・歩行障害などの症状があります。この場合はシャント手術といって髄液を脳の外(腹腔)へ流す手術を行います(脳室・腹腔短絡術)。くも膜下出血後安定してきてもなんとなくボーッとしておかしいといった症状が改善されます。
 
どんな予防法
破裂の前触れ
脳動脈瘤は破裂する前に分かることもあります。
動眼神経麻痺といって、片方の瞼が開かなくなり、両眼で物を見るとダブって見える(複視)様になることがあります。これは内頚動脈後交通動脈分岐部瘤という動脈瘤が大きくなり動眼神経を圧迫した時に起こります。破裂の前触れと考えられ、入院して手術を行います。また動脈瘤が視神経を圧迫すると視野が欠けたり、視力が落ちたりすることもあります。
 
判断が難しい「警告頭痛」
またくも膜下出血の頭痛より少し軽い頭痛があって見過ごしていると、そのあとにくも膜下出血を起こす例があります。これは少量のくも膜下出血が起こったものと考えられ、警告頭痛ともいわれますが、この時点で入院して治療ができている例はあまりありません。どちらにしろ殆どの例はくも膜下出血で発症し、病院に搬送されます。
 
見つかることが多くなってきた「未破裂脳動脈瘤」
最近ではMRAが簡単にできるようになり、他の病気でMRIを撮ったり、脳ドックで検査をした場合に破裂していない未破裂脳動脈瘤が見つかることが多くなってきました。脳ドックの調査などをまとめてみると未破裂脳動脈瘤は40歳以上の中高年の5%以上の人が持っていると考えられます。70歳以上では10%を超えるというデータもあります。また家族の2親等以内にくも膜下出血の人がいた場合は10%以上の保有率になり、家族で同じ病気になる確率が高いといえます。未破裂脳動脈瘤の破裂率については今迄色々な報告がありますが、年間0.05%から2%と報告されており、未だはっきりしたことがいえません。しかし100人に1人前後が一年間の間に破裂すると考えていいと思います。

最近では未破裂脳動脈瘤が見つかった場合に5mm以上、70歳以下であれば破裂する前にネッククリッピングやコイル塞栓術を行って破裂を予防する手術が行われています。しかしこの治療法にもリスクが伴います。
これについては未破裂脳動脈瘤の項に詳しく書きましたので、それを読んで下さい。御自分の家族がくも膜下出血を起こした場合、心配であればMRAの検査を受けてみるのもいいかもしれません。
 
(文責:髙橋 伸明)
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脳神経外科、脳卒中内科、神経内科、
(急性期)リハビリテーション科
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