頭痛を経験したことのない人はほとんどいないと思います。自分が頭痛もちと感じている人は3000万人以上いると言われ、実に日本人の1/4くらいいるとされています。また、めまいも多い疾患です。
救急外来に搬入されてくる激しい頭痛とめまいは重篤感がありますが、軽い頭痛とめまいの中にも決して見逃してはならない疾患があります。たとえば、軽い頭痛を訴えて外来受診された患者様で、大きな脳腫瘍や軽度のクモ膜下出血が見つかることもあります。また、めまいも小脳出血・小脳梗塞・脳腫瘍が潜んでいることもありますので注意が必要です。
2013年国際頭痛分類第3版には片頭痛とめまいの関連が注目され、「前庭性片頭痛」が掲載されました。
【軽い頭痛と思ったら】
【軽いめまいと思ったら】
頭痛
どんな病気
頭痛のみが主訴である場合に、脳神経外科疾患であることは少ないでしょう、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛など頭痛そのものが疾患である場合と風邪・発熱などの全身疾患の症状として頭痛がほとんどです。
診断を誤ると致死的結果になる脳神経外科疾患があるので、外来では注意深い病歴の聴取・診察・脳の検査(CT・MRI)が必要です。
頭痛の分類
2013年国際頭痛分類第3版が作成され、基本的には2004年の第2版と変わりはなく、詳しくは紹介できません。
分類を簡単に言えば、一次性頭痛と言って脳自体には病気がなく、脳周辺の血管や筋肉の異常での頭痛と脳自体に病気があり頭痛が起こる二次性頭痛に分かれます。二次性頭痛には脳出血・脳腫瘍・髄膜炎・特殊な脳梗塞(椎骨動脈解離)などがあります。これらの頭痛はそれぞれの項目を参照してください。
ここでは一次性頭痛について述べます。三叉神経も別項を参照してください。
片頭痛
どんな病気
一定の間隔を置いて発作性に現れる頭痛で、女性に多く遅くとも30歳ころまでに発症します。発症機序には「血管説」「神経節」「三叉神経血管説」などがありますが、脳血管の拡張と炎症により血管周囲の神経が敏感になり監査されることにより頭痛が起こるとされています。血管性の頭痛ですので、拍動性のズキズキする痛みです。片頭痛の発生には、神経伝達物質のセロトニンが重要な役割を担っています。
どんな症状
片頭痛は片側の痛みとは限がなく、両側性の痛みもあります。また、前兆を伴うものと前兆を伴わないものがあります。前兆は典型的には閃輝暗点と言ってピカピカした模様に引き続き、視野欠損が拡大進展します。片頭痛に特徴的なのは随伴症状を有することで、悪心・嘔吐を伴い、光・音・臭過敏が80%に認められます。「香水がつけれなくなりました」と言われる方もおられます。前兆が片麻痺の時は片麻痺性片頭痛と分類します。80%は前兆のない片頭痛です。また、生理に関係する頭痛は片頭痛ともいわれています。
どんな治療法
治療は、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)や古典的なエルゴタミン製剤等(クリアミン・ジヒデルゴット)とセロトニン受容体に選択的に作動するトリプタン系薬(イミグラン・ゾーミック・レルパックス・マクサルト・アマージ)があります。片頭痛の予防薬もあります(ミグシス・テラナス・バルプロ酸・アミトリプチン等)。頭痛の激しいときは、イミグランの自己注射が有効です。
緊張型頭痛
どんな病気
緊張型頭痛は最も高頻度に見られる頭痛で、慢性頭痛の大半を占めます。筋収縮型頭痛ともいわれ、肩こり・頸のこりやストレスが原因になります。締め付けられるような頭痛が特徴で嘔気・嘔吐も伴うことがあります。
どんな治療法
治療は、緊張型片頭痛の原因となっている姿勢や対人関係など、身体的・精神的ストレスを排除することです。暖かい風呂に入る・ストレッチをする・十分な睡眠をとる等、日常生活の改善をするとともに、薬物療法(鎮痛剤・抗不安剤・中枢性筋弛緩剤)を行います。
群発頭痛
どんな病気
厳密に一側性で、眼窩付近に数時間続く激痛発作です。必ず、頭痛と同側に流涙・鼻漏などの自律神経系の症状を伴います。眼窩部の激痛が三叉神経第1枝から脳幹に入った後反射弓をつくり、副交感神経を介して結膜充血・縮瞳などが起こります。
治療は、片頭痛に準じて行います。
めまい
どんな病気
めまいも患者様がよく訴える症状です。症候学的には4つに分類されます。
①回転性めまい:
自分の身体や大地が回転しているような感覚で、激しい強い嘔気を伴い、身体のバランスを失って倒れることがあります。三半規管・前庭神経の異常など前庭神経核より末梢の障害で起こります。
②浮遊性めまい:
非回転性のふらつきを感じます。回転性めまいの回復時・脳幹小脳の異常・高血圧などの異常で起こります。
③立ちくらみ(失神):
意識が遠くなる感じで、実際に失神することもあります。起立性低血圧や循環器疾患であるアダムス・ストークス症候群で起こります。
④平衡障害:
平衡機能障害が原因で起こります。小脳眼球および前庭神経失調により起こり、障害側に倒れやすいです。
また、脳神経外科医が治療する中枢性めまいと耳鼻科医が治療する末梢性めまいに分かれます。
①中枢性めまい:
症状は比較的持続的で、注視方向性眼振やその他の神経症状を伴います。脳幹や小脳の脳血管障害・脳腫瘍・変性疾患が原因で、CT・MRI検査や有用です。
症状は重度・突発性で、一側方注視性眼振や回転性めまいを伴います。
①末梢性めまい:
自分の身体や大地が回転しているような感覚で、激しい強い嘔気を伴い、身体のバランスを失って倒れることがあります。三半規管・前庭神経の異常など前庭神経核より末梢の障害で起こります。
いずれにしても、めまいの症状から中枢性か末梢性めまいかの鑑別は困難な時があり、私はMRI検査をすることにしています。単なるめまいと思っても、拡散強調画像で新鮮小脳梗塞を認めることが多いように感じます。
(文責:髙橋 伸明)
頭痛を経験したことのない人はほとんどいないと思います。自分が頭痛もちと感じている人は3000万人以上いると言われ、実に日本人の1/4くらいいるとされています。また、めまいも多い疾患です。
救急外来に搬入されてくる激しい頭痛とめまいは重篤感がありますが、軽い頭痛とめまいの中にも決して見逃してはならない疾患があります。たとえば、軽い頭痛を訴えて外来受診された患者様で、大きな脳腫瘍や軽度のクモ膜下出血が見つかることもあります。また、めまいも小脳出血・小脳梗塞・脳腫瘍が潜んでいることもありますので注意が必要です。
2013年国際頭痛分類第3版には片頭痛とめまいの関連が注目され、「前庭性片頭痛」が掲載されました。
【軽い頭痛と思ったら】
【軽いめまいと思ったら】
頭痛
どんな病気
頭痛のみが主訴である場合に、脳神経外科疾患であることは少ないでしょう、片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛など頭痛そのものが疾患である場合と風邪・発熱などの全身疾患の症状として頭痛がほとんどです。
診断を誤ると致死的結果になる脳神経外科疾患があるので、外来では注意深い病歴の聴取・診察・脳の検査(CT・MRI)が必要です。
頭痛の分類
2013年国際頭痛分類第3版が作成され、基本的には2004年の第2版と変わりはなく、詳しくは紹介できません。
分類を簡単に言えば、一次性頭痛と言って脳自体には病気がなく、脳周辺の血管や筋肉の異常での頭痛と脳自体に病気があり頭痛が起こる二次性頭痛に分かれます。二次性頭痛には脳出血・脳腫瘍・髄膜炎・特殊な脳梗塞(椎骨動脈解離)などがあります。これらの頭痛はそれぞれの項目を参照してください。
ここでは一次性頭痛について述べます。三叉神経も別項を参照してください。
片頭痛
どんな病気
一定の間隔を置いて発作性に現れる頭痛で、女性に多く遅くとも30歳ころまでに発症します。発症機序には「血管説」「神経節」「三叉神経血管説」などがありますが、脳血管の拡張と炎症により血管周囲の神経が敏感になり監査されることにより頭痛が起こるとされています。血管性の頭痛ですので、拍動性のズキズキする痛みです。片頭痛の発生には、神経伝達物質のセロトニンが重要な役割を担っています。
どんな症状
片頭痛は片側の痛みとは限がなく、両側性の痛みもあります。また、前兆を伴うものと前兆を伴わないものがあります。前兆は典型的には閃輝暗点と言ってピカピカした模様に引き続き、視野欠損が拡大進展します。片頭痛に特徴的なのは随伴症状を有することで、悪心・嘔吐を伴い、光・音・臭過敏が80%に認められます。「香水がつけれなくなりました」と言われる方もおられます。前兆が片麻痺の時は片麻痺性片頭痛と分類します。80%は前兆のない片頭痛です。また、生理に関係する頭痛は片頭痛ともいわれています。
どんな治療法
治療は、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)や古典的なエルゴタミン製剤等(クリアミン・ジヒデルゴット)とセロトニン受容体に選択的に作動するトリプタン系薬(イミグラン・ゾーミック・レルパックス・マクサルト・アマージ)があります。片頭痛の予防薬もあります(ミグシス・テラナス・バルプロ酸・アミトリプチン等)。頭痛の激しいときは、イミグランの自己注射が有効です。
緊張型頭痛
どんな病気
緊張型頭痛は最も高頻度に見られる頭痛で、慢性頭痛の大半を占めます。筋収縮型頭痛ともいわれ、肩こり・頸のこりやストレスが原因になります。締め付けられるような頭痛が特徴で嘔気・嘔吐も伴うことがあります。
どんな治療法
治療は、緊張型片頭痛の原因となっている姿勢や対人関係など、身体的・精神的ストレスを排除することです。暖かい風呂に入る・ストレッチをする・十分な睡眠をとる等、日常生活の改善をするとともに、薬物療法(鎮痛剤・抗不安剤・中枢性筋弛緩剤)を行います。
群発頭痛
どんな病気
厳密に一側性で、眼窩付近に数時間続く激痛発作です。必ず、頭痛と同側に流涙・鼻漏などの自律神経系の症状を伴います。眼窩部の激痛が三叉神経第1枝から脳幹に入った後反射弓をつくり、副交感神経を介して結膜充血・縮瞳などが起こります。
治療は、片頭痛に準じて行います。
めまい
どんな病気
めまいも患者様がよく訴える症状です。症候学的には4つに分類されます。
①回転性めまい:
自分の身体や大地が回転しているような感覚で、激しい強い嘔気を伴い、身体のバランスを失って倒れることがあります。三半規管・前庭神経の異常など前庭神経核より末梢の障害で起こります。
②浮遊性めまい:
非回転性のふらつきを感じます。回転性めまいの回復時・脳幹小脳の異常・高血圧などの異常で起こります。
③立ちくらみ(失神):
意識が遠くなる感じで、実際に失神することもあります。起立性低血圧や循環器疾患であるアダムス・ストークス症候群で起こります。
④平衡障害:
平衡機能障害が原因で起こります。小脳眼球および前庭神経失調により起こり、障害側に倒れやすいです。
また、脳神経外科医が治療する中枢性めまいと耳鼻科医が治療する末梢性めまいに分かれます。
①中枢性めまい:
症状は比較的持続的で、注視方向性眼振やその他の神経症状を伴います。脳幹や小脳の脳血管障害・脳腫瘍・変性疾患が原因で、CT・MRI検査や有用です。
症状は重度・突発性で、一側方注視性眼振や回転性めまいを伴います。
①末梢性めまい:
自分の身体や大地が回転しているような感覚で、激しい強い嘔気を伴い、身体のバランスを失って倒れることがあります。三半規管・前庭神経の異常など前庭神経核より末梢の障害で起こります。
いずれにしても、めまいの症状から中枢性か末梢性めまいかの鑑別は困難な時があり、私はMRI検査をすることにしています。単なるめまいと思っても、拡散強調画像で新鮮小脳梗塞を認めることが多いように感じます。
(文責:髙橋 伸明)